前衛音楽で頭を溶かす

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「ミカーシャ」または「エレナ」という名前に覚えのある方はご連絡ください。

この記事は、脳みそ溶かされた音楽 Advent Calendar 2017 11日目の記事です。

ちなみに今日は12月12日です。つまり1日遅刻です。すみませんでした。 

 

はじめに

早速ですが、皆さんは普段現代音楽、あるいは前衛音楽を聴く機会があるでしょうか。

あまり聴かないというなら、この記事の内容はあまりおすすめできません。無理のない範囲でお楽しみください。

また架空の新興宗教を題材とした楽曲を取り扱うため、これらの内容を避けたい方はブラウザのバックボタンまたは閉じるボタンを押すことをお勧めします。

音源をお探しの方、申し訳ありませんが、今回紹介する作品のフル音源は2017年12月11日現在ありません。上演日時と関連作品の音源、作品の一部分の音源を紹介します。

 

TL;DR

 

本題

先週土曜、三輪眞弘によるモノローグ・オペラ『新しい時代』を見てきました。

まず、このオペラについてのストーリーと世界観を引用します。

このオペラの主人公は、14歳の少年である。ストーリーは、この少年がネット上に漂う情報の中から「新しい時代」の神のメッセージを聞き取って、ネットワークの中に自分という存在の情報を解放し、そして余剰になった自分の物理的存在を「消去する」(つまり自死する)というものだ。

伊東信宏, 『新しい時代』曲目解説

地球規模で結ばれた現代のデジタルネットワークは莫大な知的情報を集積、処理する知の書物となり個々の人間の能力をはるかに超えた地球全体の頭脳となる。……
この不思議なコードの意味を直感した一部の人々は……人間の悟性に直接メッセージを伝えているものであることを発見し、ネットワーク上に宗教ともいえる信仰が自然発生的に生まれた。

三輪眞弘, 声のような音/音のような声

 

この作品が音楽的にみて何が"ヤバい"のかというと、上演時間90分のうち多く(体感半分ほど?)をコンピュータによる自動作曲された音楽が占めるということです。具体的にはこれ(開くと音声が再生されます)と、それに似たものです。

第二部で演奏される「言葉の影、またはアレルヤ —Aのテクストによる—」ではフォルマント合成*1を楽器によって実現することを試みています。しかし、これらの"声"が言葉を成すことはありません。そうしてまた空間に散ってゆき、ここにあるようで微塵もここにない、そういった不思議な感覚を呼び寄せるのです。

作品の魅力は"声"だけではありません。残りの時間は人類(つまり三輪眞弘)による作曲なのですが、これもまた深く考え込まれているのです。ある時は日本の五音音階を感じさせる歌が、ある時は西洋の教会旋法を感じさせる歌が。つまり東西の古謡が並ぶのですが、最終的に「独唱曲:新しい時代」でこの二つが同じ音楽に組み込まれるのです。

 

考察

さて、現実でも人々は"ネットワークによる演算"と、その結果に価値を見出しはじめています*2し、電脳化もそれほど遠い未来の話ではないと思います。東西の音楽の統一に関しては昭和の時代に実現されました。

そう考えると、いつかはこの作品と同様に人工知能による宗教が生まれるのではないかという気がしてきます……

 

音源紹介

 

  • The New Era Songs of the Believers (開くと音声が再生されます)
    この作品の根幹ともいえる、コンピュータによって自動作曲される音楽です。
    毎時58分ごろから10分ほど聴くことをお勧めします。
  • 言葉の影、またはアレルヤ
    これもまた、コンピュータによる自動作曲です。フォルマント合成を試みます。
  • 新しい時代 信徒歌曲集
  • Soul Source presents“ROUTINE”Compilation
    トラック14「Wach jetzt auf!」が「新しい時代」の縮小ともいえます。
    音源が欲しければここから始めるのが良いのではないかと思います。(ジャンルを超えたコンピレーションアルバムなので、自分に合わなければ他の楽曲を聴けば良いのです)
    ちなみに和訳は「今すぐ目覚めよ!」となります。

 

明日の記事はejo090さんです。私が遅刻したので、すでに上がっていますね。

ejo090.hatenadiary.jp

 

以上、ありがとうございました。

*1:ヒトの声(の母音)は高々2つの正弦波によって再現できる、という音声合成の基本的理論

*2:つまりはブロックチェーンによる仮想通貨のことです